IT武装戦略の着眼点

第10話:経営上における、本当の資産とは?

2015年09月09日

「経営上における、自社の資産を思い浮かべてください。」
「一体いくつの資産をリストアップ出来るでしょうか?」
これはセミナーなどで、参加者によく質問することです。

経営者に、自社の資産リストをつくってもらうと、すぐに出てくるのは不動産、土地、機械、在庫品など。いわゆる貸借対照表に記載されているものです。自社の顧客を資産リストに入れることに気がつかない経営者が多いのです。

この感覚の欠如が、経営上の問題を反映していることがよく有ります。優れた経営者は、顧客こそが最重要資産であり、そう理解し、実際にそのように顧客を扱っています。この点をきちんと把握し、自社にとっての顧客の価値、潜在価値や真価を理解する必要があります。


江戸時代の商人は、屋敷が火事になると、真っ先に顧客台帳を井戸に投げ込んでいたそうです。当時の顧客台帳は特殊な紙で出来ており、水に濡れても文字が消えない工夫をしていたようです。

商いの経験上、建物が火事で無くなっても、顧客台帳さえあれば商売が再生できることを知っていたのでしょう。しかし、前述した試算表に記載されている資産からは、商売を再生することは出来ないのです。

このことからも、経営上における本当の資産は、"顧客台帳"だと言えます。


もうひとつ、「日本酒の近現代史:酒造地の誕生(歴史文化ライブラリー)」(鈴木芳行氏:著)という本から、顧客台帳の重要性にまつわるエピソードをご紹介したいと思います。この本は、"日本酒"をキーワードに、日本近現代史の一端を描いたものです。

酒造家たちが各時代の経済・社会的な変動、酒税や酒類制度の改変、需要の変動、腐造や機械の導入などの技術的な課題、杜氏や従業員などの労働者不足といったいろんな課題を乗り越えながらどのように、自社や業界を発展させてきたかが紹介されています。

この本の章で「関東大震災と下り酒の消滅」というテーマのもと、明治末期から大正期にかけての変化について触れられています。1つの画期となったのが関東大震災でした。

明治20~30年代、東京市場では酒問屋による下り酒(くだりざけ)の販売が最高潮を迎えていました。下り酒(くだりざけ)とは、江戸時代に上方で生産され、江戸へ運ばれ消費された酒のことです。

しかし、大正12年9月に関東大震災が発生します。その結果、「多くの酒問屋が、先祖伝来の店舗や倉庫を消失させ、顧客帳簿も消失し、債権の回収不能になるなどして、経営破たんに陥った」とのことです。

これも、顧客台帳の重要性が良くわかる事例であります。顧客台帳は、経営上の継続性や発展性という観点からも、現預金よりも大事かもしれません。


では、その顧客帳簿をどのような形で持つかも大切なことです。クラウド上にあげておくのか、自前のシステムでもつのか、エクセルで保存してバックアップをとるのか、紙で管理して大事に保管するのか?

私の場合、クラウドに預けておく方がよっぽど安心だと考えています。自社の顧客情報はもちろんのこと、スマホ内の電話帳データもクラウド化しています。

PCやハードディスクにもデータとしてはありますが、機器がいつ壊れるかわからないですし、震災でやられる可能性もあります。実際に弊社事務所にカミナリが落ちて、ハードディスクが壊れました・・・。

特に、紙やローカルのPCやサーバーに置いておいたデータは、震災では失われてしまうリスクが大きいでしょう。一方で、クラウドだからといって絶対に安全・安心ということはありません。

その中で、安全性やリスク、利便性やコストといった観点からどういう手段を選び、自社に合う手段を選んでいくかという判断が鍵になってきます。上記の事例はこうした点を考えるのに良いきっかけとなるのではないかと思います。


優れた経営者のように、経営上における本当の資産である、"顧客台帳"をしっかり守り、顧客の価値を高めるために、上手く活用していくべきです!

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