IT武装戦略の着眼点

第13話:増える企業の事務負担をビジネスチャンスに変える!

2015年09月30日

国民一人ひとりに番号を割り当てる、税と社会保障の共通番号「マイナンバー制度」の番号通知が10月から始まります。この制度では、企業が従業員、アルバイトのほか、扶養家族の個人番号を収集して管理しなければいけません。

番号は源泉徴収票や社会保障関連の書類に記載し、税務署などに提出します。つまり、企業は厳重な管理を実施しなければならず、事務負担が増えることになります。

中小企業にとっては事務負担が増えるだけでも大変ですが、もっと重要な点があります。それは、管理している個人番号等が漏洩した場合に、新たな罰則規定が設けられていることです。

2001年に個人情報保護法が制定し、国内でもセキュリティ対策は一斉に強化されてきましたが、マイナンバー制度の施行に伴う特定個人情報の漏洩については、既存の個人情報保護とは次元の違う罰則となっています。

たとえば、もっとも重い刑事罰は「4年以下の懲役または200万円以下の罰金」もしくはその両方を科せられます。経営者は正面からこの点を検討しておかないと、特定個人情報の漏洩により、事業継続にも影響が出ることにもなりかねません。


経営者にとっては、マイナンバー制度は「事業にとって生産性を生まないし、コストばかりだな~」と思うかもしれません。しかし一方で、このマイナンバー制度をビジネスチャンスに捉えている企業も多数あります。

実際に、「マイナンバー番号管理代行」のビジネスに、ベンチャー企業の事業参入が相次いでいるようです。また一口に、マイナンバー関連ビジネスと言っても、事業は幅広いです。


クラウド会計ソフトの「freee」(http://www.freee.co.jp/)も管理代行を始めました。価格は利用人数に関係なく月額税込み980円。サイバー攻撃対策など総合サービスを提供している大手に比べ、提供機能を絞り込み、価格を10分の1以下に抑えています。

同社の会計・給与計算ソフトを利用している38万超の事業者には無料で提供します。マイナンバー単体での収益化は見込んでおらず、制度を契機にクラウドの利便性を打ち出し、主要事業で顧客を増やす戦略のようです。

会計・税務書類のオンライン保管サービスを提供する「インテリジェントウィルパワー」(http://www.tiwc.co.jp/)も、マイナンバー向けのサービスを始めています。会計士や税理士向けに提供している既存のサービスに、番号管理の機能を追加。独自の暗号キーを使い、本人以外には事務担当しか番号を扱えないようにするのが特徴のようです。


また事業参入するまでもなく、マイナンバー制度に便乗して、バカ売れしている商品もあります。

ひとつは、「指紋認証機能付きの金庫」です。売れ筋は30万円程度の中型金庫だそうですが、従業員から最上級ともいえる個人情報を預かる立場になるため、中小企業から問い合わせが相次ぎ、品薄・入荷待ちが続いているそうです。

もうひとつは、「高機能シュレッダー」。シュレッダーを導入している会社はたくさんあります。しかしこの高性能シュレッダーは、細断されたクズが約1㎜×5㎜のまるで粉雪のような細かさになるレベルです。

別名「粉雪シュレッダー」と呼ばれており、1台が100万円近いですが、メーカーでは出荷待ちの状態のようです。


このように、今まで普通に売られていたものなのに、世のトレンドに引っ張られて突然爆発的に売れ始めるものがあります。いわゆる「特需」というものです。

少し前でいえば、「相続税及び贈与税の税制改正」も同じ状況でした。これまで相続税とは無縁だった人たちが、一斉に対象になったことで、多くの関心が集まったものです。

このタイミングをチャンスと捉えて、いちはやくセミナーや勉強会などを企画した税理士や不動産会社、生命保険代理店などは、大きな成果を得られたのではないかと思います。


重要なことは、自社の売り物の強みや特徴をしっかり把握しておき、世の中のトレンドに合致させることです。単純な販売では機会を得ることは少ないです。しかしクラウド会計ソフト「freee」のように、トレンド(制度)を入口にして、出口(主要事業)で顧客を増やすという戦略は、多くの業種で応用可能です!

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