必要最低限のサービスに絞りこむことで、ムダを嫌う顧客の支持を得る「LCC(ローコストキャリア)」の経営戦略があります。
食事や飲み物は有料ですが、安く飛行機に乗ることができます。なくても支障がない余剰サービスを極力省き、中心となるサービスだけを、質を下げることなく、低価格で提供しています。
この戦略を応用して、今ではビジネスホテルや理美容室など、多様な業界に広がっています。
サービスの質は下げていないのですが、ただイメージとしては、「安かろう・悪かろう」と勘違いしそうです。なので、高価格帯の商品やサービスでは応用が難しいと思っていました。あの企業が出てくるまでは・・・。
あの企業とは、何かとテレビCMで話題のスポーツジム「RIZAP(ライザップ)」(http://www.rizap.jp/)です。
現在(2015年9月末)、海外も含めて62店舗を展開中で、事業開始3年目の2015年3月期末で売上高100億円。売上目標200億円も見込めている様子です。
決して安くない料金設定です。2カ月間トレーニングをする標準的なコースで、料金は298,000円(税別)。それとは別に入会金50,000円も必要です。
他のスポーツジムやフィットネスクラブと異なり、完全オーダーメイドプログラムとして、定期的カウンセリング、専属トレーナーとのマンツーマントレーニングや、毎日の徹底した食事指導ときめ細かいサービスを実施しています。
しかも高単価でありながらも、顧客が「不要」だと感じていた要素を排除することで、他社よりも原価や経費を抑えて高収益体制を構築しています。
会社公表資料によると、売上高対比で人件費15%(他社20~30%)、地代家賃4%(同20%)、水道光熱費1%(同10%)、設備維持費1%(同5~8%)、店舗減価償却費1%(同7~10%)。いずれも他社より低い数値です。
実際に、店舗では5畳ほどの広さの個室ブースにあるのは、大きなベンチプレスの機械のほかは、バランスボールや腹筋用のマット程度です。これが水道光熱費や設備維持費の低さにつながっています。
出店も一等地ではなく、大通りから離れた場所やビルの2階としているので、地代家賃が低いのです。
そもそも、他のスポーツジムやフィットネスクラブのようにふと立ち寄って入会してもらうのではなく、広告宣伝経由で集客するので、店舗が駅から近い必要はなく、ビルの地下でも地上でも良いようです。
坪単価の売上高は年間約250万円で粗利益率が高いため、広告費への積極投資が可能となります。また広告宣伝費を上手くコントロールすれば20%強の営業利益率が実現可能です。
同じくフィットネスクラブの業界で、LCCとフランチャイズの仕組みで成長した企業に「カーブス」(http://www.curves.co.jp/)があります。
「カーブス」は世界約80カ国で展開し、1992年の米国テキサス州の一号店開業からわずか10年程度で世界最大のフィットネス・チェーンとなりました。日本においては、FC展開開始から8年で1,300店舗を超え約58万人の女性が会員となっています。(2013年7月末現在)
急成長の理由は、従来のフィットネスクラブから、ターゲット顧客である中高年女性が「不要」だと感じていた要素を排除したことです。主に排除したのは、男性(Men)・鏡(Mirror)・化粧(Makeup)の「3つのM」でした。
女性専用なので男性はいません。鏡で自分の体型を見て不愉快になりません。男性がいないので化粧も必要ありません。このように徹底的に絞りこみ、従来店に対する中高年女性の不安や不満を解消し、多くの潜在顧客をつかんだのです。
また、狭い場所を活用できる事業構造なので、場所を選ばずに40坪程度の場所でも出店ができます。これに、余っている土地やビルの一室を有効活用したい不動産オーナーが飛びつきます。フランチャイズ展開をしたのも大きな要因といえます。
自社の戦略で、必要最低限の商品やサービスに絞りこみ、さらに高価格帯に絞りこみ、水平展開することは不可能でしょうか?
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