IT武装戦略の着眼点

第30話:ビッグデータを経営戦略に活用する!

2016年02月10日

先日、「クラウドソーシング活用推進コンソーシアムシンポジウム」に参加しました。東京大学大学院経済学研究科伊藤元重教授の基調講演があったのですが、いくつかのビッグデータの活用事例を紹介していました。

インターネットやスマホの普及で、日々増え続ける膨大なデータ「ビッグデータ」ですが、2000年から2020年までの20年間で、約6,500倍になると予測されているそうです。

これはあらゆるモノがネットに接続することで、インターネット上に加え、実社会のデジタルデータ(自然現象、生体現象など)が増大するのが理由です。そこに技術革新が加わり、幅広く応用され、経済活動・社会システムが変革するのです。

現在はこのビッグデータを収集・分析し、消費者のニーズを掘り起こしたり、行動パターンを予測したりする動きが広がっています。


ひとつ面白いエピソードがある事例をご紹介します。
ミネソタ州ミネアポリス近郊に住む男性が、地元の「ターゲット」(米国の大手小売チェーン)の店舗に怒鳴り込んできます。

「あり得ない!」男性は店の責任者に叫びます!
「17歳の娘に赤ちゃん用のおむつやベビーカーのクーポンを送るとは何事だ!」
責任者は会社のビッグデータのシステムの事など知らず、間違いであったと説明し謝罪しました。

しかし1ヶ月後、怒っていた父親から謝罪の電話がかかってきます。実は間違っていたのは彼の方でターゲットが正しかったのです。娘は妊娠していたそうです。

ターゲットは親よりも早く娘の妊娠を察知していたわけですが、どうしてそんなことが分かったのでしょうか?

自社のポイントカードのビッグデータ分析を行ったのです。妊娠中の顧客の購入履歴を分析し、ローション、サプリメント等の25品目の商品について、以下の事実を発見します。

●妊娠中期(13週~27週)中にフレグランスフリーのローションを多く購入している。
●妊娠20週あたりではカルシウムやマグネシウム、亜鉛のサプリメントを購入している傾向が高い。
●出産が近づくとフレグランスフリーの石鹸やコットンボールのビッグサイズ・パック、手ぬぐいや除菌用ハンドローションを突然購入する!

これらのデータと、各顧客の性別や年齢購入データから、妊娠中と推測される女性の出産予定時期を予測します。そして出産予測時期後に、乳児関連商品等のクーポンを送付するキャンペーンを実施したのです。

ターゲットは利益向上のため、乳児関連商品の売上増大を狙っていました。そこで、このようなビッグデータ分析を活用した販売促進を実施したのです。


日本企業でもビッグデータ分析の活用事例が出ています。

コンビニ大手の「ローソン」が、自社利用者の約半数が会員カードを使用するため、商品の販売情報と顧客情報の関係を分析することができるようになり、「1割の上得意客の売上が全体の6割を占める」ことを突き止めます。

従来のPOSデータでは分からなかった、同じ顧客が同じ商品を繰り返し購入する「リピート率」の分析が可能になり、リピート率が高い新商品の販促を強化することで、素早くヒット商品を育てることができるようになりました。

「あきんどスシロー」でも、 すし皿の裏にICタグを取り付け、年間10億件、累積で40億件以上の売上情報を分析します。顧客の人数・性別・年齢をもとに、その顧客の入店1分後と15分後の食欲を予測するというものです。

食事中の全顧客の予測される食欲に基づき、回転レーンに流すべきネタの種類や量を予測し、ネタを解凍する量とタイミングを調整しました。この結果、廃棄するネタの量を4分の1に削減することに成功します。


これまでも、販売促進にデータを活用するのは当たり前でしたが、ここまで高度で精度の高いデータ分析は費用もかかり難しかったでしょう。ましてや中小企業には不可能に近いと思います。

しかし最近では、低価格で効果的な「道具」が揃ってきました。これからは、中小企業でも手軽にビッグデータ分析に取り組んでいけるのです!

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