IT武装戦略の着眼点

第31話:ネット時代の新たなフリー(無料)戦略とは?

2016年02月17日

インターネットには、無料版で利用者を増やし数パーセントの有料版の利用者で稼ぐ仕組みが多数あります。

これは「フリーミアム」と呼ばれ、サービスや商品を無料(フリー)で提供して多くの顧客を獲得し、ユーザーの一部に高度な機能や使い勝手の良いプレミアム版を購入してもらうビジネスモデルです。

そもそも「フリー(無料)」と「プレミアム(割り増し)」を合わせた造語で、米国のベンチャー投資家フレッド・ウィルソンが提唱し、クリス・アンダーソン著の「Free(フリー)」というベストセラー書籍に詳しく解説され、急速に知られるようになりました。

フリーミアムの代表といえば、無料インターネット電話「スカイプ」や、「エバーノート」「ドロップボックス」といったクラウドサービスが挙げられます。

それぞれ無料のサービスとして人気がありますが、例えばスカイプは一般電話と通話できる有料版が、エバーノート、ドロップボックスには利用できるデータ量が大量になる有料版があります。

このプレミアム版の利益によって、無料版のサービスが支えられているわけです。

このフリー(無料)の販売手法は古くからあるのですが、従来のアナログ商品とは根本的に異なります。例えば、化粧品や食料品などは一定の製造コストがかかるため、試供品を無料で配布すると、その数に比例して提供コストも増えます。

しかしデジタルのコンテンツやサービスでは、基本サービスさえ完成すればその提供コストはゼロに近くて済む特徴があります。そのため無料ユーザーがどれだけ増えても、ごくわずかな有料ユーザーで十分収益が上げられます。

先述したフリーミアムを実践する企業でも、たいてい無料ユーザーが90%以上で、10%に満たない有料ユーザーからの課金で利益を上げているのです。

いかに無料ユーザーにかかるコストを、下げられるかが重要な点です。また無料から有料への移行を促すための両者の魅力的な差別化、高すぎないハードルを用意することも必須です。


従来とは違うフリーミアム戦略で、急成長している企業があります。
米国の「Zenefits」という中小企業の人事向けサービスを展開する企業です。たった2年で時価総額5,400億円となり驚異的な成長を見せています。

この「Zenefits」では、中小企業向けに給与計算・支払、住民税支払、健康保険や401K(確定拠出年金)、ストックオプションを含む社員福利厚生、採用手続き、勤怠管理などの人事管理サービスをクラウドで無料提供しています。

無料で提供できる仕組みは、サービス利用者である中小企業に健康保険を販売して、保険会社より販売手数料を得ているからです。

創業者は友人と創業した際に、煩雑な人事の作業を自ら経験し、中小企業向けに人事オンラインツールの提供を考案して、エンジニアと共に「Zenefits」を立ち上げます。

しかしサービスツールを開発することは可能ではあるものの、中小企業には手の届かない価格になることが問題となりました。

そうした際、シリコンバレーで医療保険制度改革法(通称「オバマケア」)作成にかかわった医者である投資家と出会い、健康保険を販売して保険会社から手数料を得て、中小企業には無料で提供するビジネスモデルを考案します。

米国では、健康保険は各企業が保険会社から購入する仕組みで、中小企業では社員の44%が勤務先を通じて健康保険に加入するそうです。

中小企業にとっては、保険加入は各保険会社のプランを比較して交渉し、多くの書類をやりとりする煩わしい作業であり、とくに人事専門のスタッフを雇えない中小企業にとって負担は大きくなります。

しかし「Zenefits」を利用することで、中小企業が人事スタッフを雇うことなく、オンラインで簡単に健康保険の比較・購入が出来ます。また給与計算や福利厚生の管理もできるサービスを無料で提供したという点が人気となっています。

実際には、利用顧客の85%はサービスを利用するだけで保険購入しないようです。しかし残りの15%が保険加入するので、手数料収入となり利益が出るのです。


一昔前からずっと同じやり方で事業経営している業界であれば、このフリーミアム戦略を導入して、短期間で他社を圧倒するチャンスではないでしょうか?

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