IT武装戦略の着眼点

第43話:行動という事実をもとに、顧客心理を理解する!

2016年05月11日

「お客の心がわかれば、商売なんて苦労しないのにね!」
先日ある経営者とお話しをしていると、こんなことを言っていました。
ほとんどの経営者が、一度はこんな風に思ったことがあると思いますが・・・。

心を理解すると言えば、その名の通り心理学という学問が古くから存在します。多くのビジネスマンがこれを学んでいるのではないでしょう?中でも注目を集めているのが、「行動心理学」と呼ばれる学問です。

抽象的な理論を積み上げるのでなく、客観的に記述できる、実験により再現が可能な「行動という事実」に立脚した心理学です。

例えば、ダニエル・カーネマンとエイモスト・ベルスキーが提唱した「プロスペクト理論」は、リスク(不確実性)が伴う意思決定に際しては、利得よりも損失を重大に捉えるという主張です。

つまり、100円安くなった場合に感じる得よりも、100円高くなった場合に感じる損の方が大きいのです。

例えば、以下の2つのパターンの宝クジが選べるとします。
●A:もれなく1万円が当たるクジ
●B:50%の確立で2万円が当たるが、残り50%の確立で0円のクジ

実験によると、約60%の人が「A」を選びます。
では、次の場合はどうでしょうか?

●C:もれなく1万円を罰金として取られるクジ
●D:50%の確立で2万円を罰金として取られるが、50%の確立で免除されるクジ

この場合の実験結果では、「C」を選んだ人の割合は30%となり、「D」を選ぶ人が70%までなりました。

この実験は、結果的に見た場合どの選択肢を選んでも、金銭的価値としては全て同様の1万円であるはずです。

しかし、同じ額でも自分の「利益」と「損失」では、「損失」の方がより強く印象に残り、それを回避しようとする行動をとる事を示しています。だからこそチラシやHPの販売促進では、上手く表現することが重要です。

ライバル店と顧客満足度を比較表現しているのなら・・・
●E:当店は顧客満足度90%です!
●F:ライバル店の対応に満足していない人が10%もいます!

全く同じ事を表現しているだけなのに、相手にとっては明らかに「E」の方が好意的に受け取られることになります。自社の説明をするときには良い部分を前面に出し、逆に他社の説明をする時には悪い所を前面に出すのがポイントです。

軽いノートパソコンを販売しているのなら・・・
「重さ1.5キロのノートパソコン」ではなく、
「軽さ1.5キロのノートパソコン」と表現すべきです。

薄い腕時計を販売しているのなら・・・
「厚さ5ミリ」ではなく、「薄さ5ミリ」と表現すべきです。

タバコを吸う人にも優しい表現をつかいたいなら・・・
「禁煙席あります」ではなく、「喫煙席もあります」と表現すべきです。


例えば割引セールも、通常価格に戻した際のネガティブな反応をしっかりと捉える必要があります。

「アンカリング効果」と呼ばれる行動心理学があります。提示された特定の数値や情報が印象に残って基準点(アンカー)になり、判断に影響を及ぼす心理傾向のことです。

例えば、5万円のタブレットがあった場合、通常であれば顧客は製品の品質や利用価値に注目して、価格に見合ったものかどうかを検討して購買行動を行います。

ところが、「通常価格8万円が、今なら特別価格5万円」と表示することで、先に提示した通常価格8万円という情報がアンカーとなり、5万円という価格に対して「3万円値引きされている」という判断がなされ、お買い得に感じられるといったことがあります。

価格のアンカリング効果によって、顧客は購買判断の際、性能や品質以上に価格や割引率といった数字に注目するようになるのです。こうした価格判断は、衝動買いにも大きな影響を及ぼしていますので、上手に活用すべきです!

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