近年、米国を中心としたIT企業による異業種への参入により、既存の産業構造や勢力図が大きく変化する「破壊的なイノベーション」が様々な分野で起こっています。
分かりやすい事例が、米国のウーバーテクノロジーズが運営する、スマホ専用アプリによるタクシー配車サービスのウーバー(UBER)です。サービス開始後、瞬く間に数多くの国々、都市へと展開し、国や地域によっては社会問題化するほど利用者を拡大させています。
ITを駆使した便利なサービスが、タクシー業界に「破壊的なイノベーション」をもたらしたのですが、このようなIT企業による革新的なサービスを起点とした異業種におけるビジネス展開は「ウーバー症候群」と称されるほど増加しています。
従来の製造業ではなく、IT企業がスマートフォンやタブレット等のデバイス機器の製造や自動運転を切り口にした、自動車分野への拡大を行っていますが、これらは異業種から製造業への参入なのです。
今後は第4次産業革命ともいわれる、IoT(モノのインターネット)やビッグデータといったデジタル技術の進展によって、更に大きな環境変化が予測できます。このような大きな環境変化に応じ、ビジネスモデルや経営戦略そのものを変革しなければいけません。
IoTの進展はものづくりの現場のみならず、モノとそれをインターフェースとして展開されるサービスの融合を促し、マーケティングの方法も大きく変えています。
大量生産システムではメーカーが、シーズに基づいて開発した商品を消費者が選ぶという構図でしたが、今や消費者がニーズを発信することができ、それに基づいてメーカーがつくるという構図に変化しています。
更には、3Dプリンタやクラウドファンディングによって、消費者自らがメーカーにもなれる時代でもあります。
メーカーと消費者といった垣根が低くなる中、また、消費者ニーズが多様化する中、価値の源泉が機能やスペックといった製品そのものから、それを接点として展開される「サービス」や「ソリューション」へと変化しているのです。
つまり「何をつくるか」というより、 消費者に「どんな価値を提供するか」がより重要になっているのです。
また第4次産業革命による、新しい市場創出の事例として最近注目が集まっているのは「シェアリング・エコノミー」です。個人が保有する遊休資産である部屋や不動産、自動車などを共有し、利活用する取引やサービスの仕組みです。
これまでは共有が難しかった保有資産に関するスペックや利用・稼働状況といった情報を収集し、リアルタイムで可視化することで資産の余剰能力と一時的に資産を使用したいという、ニーズとの引き合わせを可能にするビジネスモデルです。
IoTによって「所有」から「使用」という新しい価値観がまさに創出され、市場として拡大しているのです。またモノだけでなく、個人のアイデアや知恵、スキル等の共有を含めた新たなビジネスの広がりもみられます。
宿泊シェアを手がける「Airbnb」(https://www.airbnb.jp/)や、冒頭に登場したライドシェアを手がける「Uber」「Lyft」等のサービスが広がり、人々の消費・生活スタイルを変えつつあります。
また2015年12月には、日本でも一般社団法人シェアリングエコノミー協会が設立されており今後、多種多様な新たなサービスが生まれてくる可能性が高いです。
例えば日本では、「Anyca」(https://anyca.net/)など個人間でクルマをシェアする新しいカーシェアリングサービスが始まっているほか、自動運転と組み合わせた 「シェア・オートノミー」等も加速する可能性があります。
このようにモノの情報がインターネットに結び付けられて創出される新たな市場は、当然ながら産業の垣根を越えて形成、拡大していくため、時として既存の産業構造の変化を引き起こします。
中小企業においても、独自の強みや経営戦略を絶えず強化していくと同時に、異業種との連携により必要なスキルを補いながら、このようなビジネスモデルの変革についての積極的な意識や取組は必須となります。
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