IT武装戦略の着眼点

第89話:優良顧客には特典が必要か?

2017年05月17日

「お客さんにリピートしてもらうには、ポイントカードが必要ですか?」

2店舗目の新規出店を果たした、ある唐揚げ店経営者からの相談です。

 

1930年代に、ある研究者が興味深い発見をします。「食べものを求めて迷路を走っているネズミは、食べものに近づくほど走る速度が上げる!」という結果です。この発見は「目標勾配仮設」と呼ばれ、カンタンに言うと目標が近づけば近づくほど、そこへたどり着くためにより多くの努力をはらうようになるというものです。

 

この行動は人間にも当てはまります。ポイントがいっぱいになったら、コーヒーが1杯無料で飲めるポイントカードを与えられると、人もネズミと同様スタンプが満杯に近づくにつれ、コーヒーを飲む頻度が上がるのです。

 

ビジネスで「5対25の法則」と呼ばれる法則があります。この法則は、既存顧客の離反率を5%改善できれば、収益が最低でも25%改善する、というビジネス経験則です。

 

「顧客離反率」とは、自社の顧客名簿から1年後にいなくなっている顧客の割合のことです。

 

あるカード会社では、「10%のコスト削減と離反率の2%低減では、同等の経済効果があり」、「離反率が5%下がると利益率が25~85%上がった」実績が存在しています。

 

業界によって改善率の差がありますが、最低でも5%の離反率低下が25%以上の利益率の改善につながると考えておきましょう。しかし残念ながら、多くの企業が新規顧客獲得に力を入れ、既存顧客の維持をおろそかにする傾向があります。

 

もちろん新しい顧客を獲得して、売上を上げる努力は必要です。しかし、そもそも売上を減らさないことに焦点を当てないといけません。つまり、まずは顧客の流出を止めること、すなわち「顧客維持」が重要となります。

 

これも、ビジネス経験則である「1対5の法則」から考えます。「1対5の法則」とは、新規顧客獲得コストは既存顧客維持コストの5倍になる経験則があるからです。

 

既存顧客は、すでに自社の売り物を買って経験があるため、比較的シンプルな販売促進で再購入する可能性は高いです。一方新規顧客は、自社の売り物をまだ買ったことがないために、購入までのハードルが高くなります。

 

特別なオファーを用意した高度な販売促進を展開しても、簡単には買って頂けないために、5倍ものコストがかかってくるのです。

 

顧客維持については「顧客ロイヤリティー」という言葉がよく使われます。ロイヤリティーとは「忠義」「忠節」という意味で、「顧客ロイヤリティーを獲得する」とは、顧客から高い信頼を勝ち取ることを言います。

 

新規顧客を獲得するために、たくさんの企業が様々なサービスを展開しています。友人のような親密な関係を築き、それをロイヤリティーにまで高めなければ、長期にわたる顧客維持は実現しないのです。

 

この顧客維持におススメは、ポイントカードのようなゴールが見える化できるツールです。冒頭の実験のように、人もネズミもゴールが近づくとやる気がアップしますし、人は物事の進み具合を何割達成したかという捉え方をします。

 

応用として、すでに目標の一部が達成された状況を提供すれば、顧客維持を効果的に促進することが可能となります。

 

唐揚げ店の場合、割引券がもらえる条件として、からあげの購入数を1~2ポイント追加する必要が出てきますが、それと同時に、店員さんがポイントカードを発行する際、追加した分と同じ数だけスタンプを押して顧客に渡すと良いのです。

 

顧客はゴールが近くなったように感じ、店や店員は気前の良さに対して点数を稼ぐことができるのです。

 

全ての商品やサービスに適しているわけではないですが、ゴールという報酬に向かって顧客をドンドン前進させることが、顧客維持につながるのは間違いないのです!

 

自社は、顧客維持が出来ていますか?

 

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